ずっと作りたかったCD「ねむれない夜_高橋悠治ソングブック」
思い始めて12年経ち、やっと2020年の終わりに出来上がりました。
「ぼくは12歳」全曲を含むこのアルバムについて、これからブログに書いていきます。
悠治さんと共演をはじめた2008年、すぐに、
「ソングブックを録音したい!」と申し出たところ、
「やめておけ」のお返事。
理由は、一緒に演奏するなら色んな作曲家の歌がアルバムに入っていた方が、
つまり色んなコラボが存在する方が面白いから、でした。
悠治さんのこの感覚には、その後もいろんな場面で触れることになります。
CDの帯の文、
「音楽がある場所で人はひとりではない」
これも、ある意味同じことだと思う。
あれから12年(!)
あの頃は、「ぼくは12歳」 は私には一生歌えないだろうな、と感じていました。
録音に向かうきっかけを与えてくれたのは、作曲家で、この曲集のピアノ版の編曲にも携わった戸島美喜夫さん。
コンサートで聞いてくださった後、「CDに録音してよ」と言ってくださったのです。
「ぼくは12歳」が、私は怖かった。
詩を書いた岡真史さん(1963-1975)は同世代です。
学年でいえば、私より1つ上の先輩。
なぜ怖かったか。
《ぼくは12歳》の詩集を開くと、瞬時に、
十代の頃の息苦しさ、ひりひりした感覚を思い出してしまうから。
岡真史さんの詩の行間にはあの時代独特の空気や、手触りがあります。
ウールのマフラーの匂い りんごの酸味 窓枠の重さ
どこを読んでも、甦ってくる体感があって、その中には自分で忘れていたような、
忘れたままでいたかったことも多々。
この詩集が、子供の頃の支えだった、といった友人がいました。
母親に手渡されたという人や、大人になって再度購入したという人も。
一体どれほど多くの人たちを力づけてきたのでしょうか。
CDリリースの後、学校の図書館でこの詩集に会ったという方が、まるで友達のことを話すように、
「このCDに、素晴らしい他の詩人の方々と一緒に入って、岡くんが寂しくないね」
とおっしゃっていたのが印象的でした。
友にはいろんな形があります。